タイ語の文字と南インドの文字が似ている理由

世界の言語

タイ語の文字を初めて見たとき、「どこか南インドの文字に似ている」と感じたことがある人もいるのではないでしょうか。

実際、タイ語の文字とタミル語やテルグ語などの南インドの言語で使われている文字には、見た目や仕組みの面で多くの共通点があります。

これには、タイ語の文字と南インドの文字が、歴史的に共通のルーツを持ち、同じ文化的な流れの中で発展してきたことが関係しています。

この記事では、なぜタイ語の文字と南インドの文字が似ているのかを、歴史や文化の視点から分かりやすく解説していきます。

① 共通のルーツは「古代インドの文字」

タイ語の文字と南インドの文字が似ている最大の理由は、共通の祖先となる文字が存在することにあります。

その祖先とされているのが、古代インドで生まれた「ブラーフミー文字」です。

ブラーフミー文字は、紀元前3世紀ごろからインド各地で使われるようになり、多くの文字体系の元になりました。

例えば、インドのヒンディー語やタミル語、東南アジアのタイ語やミャンマー語、さらにはチベット語やブータンのゾンカ語などに影響を与えたそうです。

② インド文化は東南アジアへ広がった

古代から中世において、インドはとても発展した文明国家だったため、仏教やヒンドゥー教とともに、インドの文字も海を越えて東南アジアへ伝わっていきました。

これは中国の漢字が日本や韓国に伝わったこととも似ていると思います。

そして、現在のカンボジアにあたる地域では、インド系の文字をもとにしてクメール文字が作られました。

その後、クメール文字はタイにも伝えられ、タイ文字はこのクメール文字をもとに、13世紀ごろに形を整えたとされています。

つまり、インドの文字の文化がカンボジアを通してタイに伝わったということです。

そのため、インドの文字とタイの文字が似ているのはとても自然といえるでしょう。

② ヤシの葉に書く文化が、文字の形を似せた。

タイの文字と南インドの文字には、丸みを帯びた形が多く、曲線や輪のような形が目立つという共通点があります。

これには、ただ古代にインドの文字がタイに伝わったということ以外にも理由があるそうです。

それは、文字を書く素材が似ていたということです。

古代インドや東南アジアでは、石や金属だけでなく、ヤシの葉や布などに文字を書くことが一般的でした。

その場合、直線をたくさん書くと素材が割れたり破れたりしやすいため、自然と曲線中心の文字が発達したと考えられています。

このような環境的な要因も、タイ語と南インドの文字が似た雰囲気を持つ理由の一つとされているそうです。

③子音が中心で、母音を周りに付けるという文字の置き方も似ている。

タイ文字と南インドの文字は、文字の見た目だけでなく、子音が文字の基本を形作り、母音をその周りに付け加えるという点でも似ています。

例えば、タイ語で「かきくけこ」を出力すると次のようになります。

ka:กา

ki:กิ

ku:กุ

ke:เก

ko:โก

アルファベットのように子音(k)の左に母音が並ぶわけではなく、子音(ก)の周りに母音が付いていることがお分かりいただけたでしょう。

これはタミル語などのインドの言語とも共通する仕組みだそうです。

④タイの文字と南インドの文字は似ているが、同じではない。

ここで注意したいのは、タイ語と南インドの言語が同じ文字を使っているわけではないという点です。

文字の形や仕組みが似ているだけで、発音や文法はまったく異なります。

つまり、南インドのタミル語が読めるからといってタイ語が読めるわけではないのです。

実際に「私は夜ご飯を食べます。」という文章をタイ語とタミル語で表すと、発音などは大きく異なることが分かります。

タイ語 : ฉันกินข้าวเย็น(chan kin kâao yen)

タミル語 : நான் இரவு உணவு சாப்பிடுகிறேன் (nāṉ iravu uṇavu sāppiḍugiṟēṉ)

つまり、タイ語を身に付けた人は、インドの文字にも比較的なじみやすいくらいに考えておくとちょうどよいでしょう。

まとめ

タイ語の文字と南インドの文字が似ているのは、共通の祖先となる文字を持っていることに加え、ヤシの葉に書く文化が広がっていたことや、子音を中心に母音を置くという文字の仕組みが共通していることが理由なのです。

このように、文字の形が似ている背景を知ることで、単なる見た目の違いだけでなく、言語や文化がどのようにつながってきたのかを、より立体的に知ることができると思います。