サムルク・カズィナを一言で言うと、カザフスタン政府が持っている超重要企業を全部まとめた会社です。
具体的には、石油会社、国鉄、航空会社、郵便、電力、通信会社まで、主要な国営企業を一つのグループとしてまとめて運営しています。
分かりやすく日本でイメージすると、JR(鉄道) や ANA(航空) 、NTT(通信)、日本郵政などを、日本政府が1つの巨大企業としてまとめて経営しているような感じです。
この記事では、サムルク・カズィナの 事業内容や歴史、これからの展望をできるだけわかりやすく紹介していきます。
① サムルク・カズィナの事業を分かりやすく解説
サムルク・カズィナは石油・ガス会社、鉄道、公的通信サービス、航空会社などのカザフスタン国内の主要企業の株式を政府に代わって保有して運営 しています。
ここでは、どのような事業を大株主として運営に関わっているかを1つずつ見ていこうと思います。
KazMunayGas(石油・ガス)

KazMunayGasは、カザフスタン最大の国営の石油・ガス会社で、原油や天然ガスの探査から生産、精製、輸送までをまとめて手がけています。
北東部のパブロダル製油所とカスピ海沿岸のアティラウ製油所という2つの巨大な製油所を運営していて、カザフスタン国内で使われるガソリンや軽油の大部分をここで作っています。
さらに8,000km超のパイプラインネットワークを持つKazTransOilやガス輸送会社のKazTransGasと連携して、海外への輸出も行っています。
Kazatomprom(ウラン)

Kazatompromはカザフスタンの国営ウラン会社で、世界の天然ウランの約40%以上を生産しています。
個人的には、カザフスタンがここまでウランで強い国だとは、正直ちょっと意外でした。
Kazatompromはウランの採掘から精製 (いらないものを取り除いて整えること)、輸出までをまとめて管理しており、原子力発電所向けの核燃料の原料を世界中に供給しています。
2018年にはアスタナ国際取引所とロンドン証券取引所に上場していて、国営企業でありながらグローバル投資家のお金も取り込んでいます。
Kazakhstan Temir Zholy(国有鉄道会社)

Kazakhstan Temir Zholyは、カザフスタンの国有鉄道会社で、国内の貨物と旅客の両方を運ぶ鉄道ネットワークを運営しています。
線路の建設やメンテナンス、列車の運行などを担当しています。例えば、首都アスタナと経済都市アルマトイの約1,200kmを結ぶ鉄道を運営しています。
また、地理的に中国とヨーロッパを陸で結ぶ物流ルートとしてもとても重要で、アジアと欧州をつなぐ大陸横断物流の中継ハブの役割を果たしています。
Kazpost(郵便)

Kazpostはカザフスタンの全国郵便会社で、手紙や宅配便、国際郵便などの配達を担っています。
それだけでなく、預金口座の管理や公共料金の支払い、送金などの金融サービスも提供しています。
そのため、銀行が近くにない地方では、Kazpostが銀行代わりになっていることもあります。
1883年から続いている歴史のある組織で、都市部から農村部まで幅広く郵便局ネットワークを張り巡らせています。
最近は追跡アプリ 「Post.kz」 で荷物の位置確認や配達状況のチェックができるようになり、ネット通販で買った商品を自宅まで追跡しながら受け取れる仕組みが整いました。
ですので、Kazpostは国内ECや海外通販を支える物流インフラとしても欠かせない存在になっています。
Air Astana(航空)

Air Astanaは20か国以上・112路線以上に飛んでいるカザフスタン最大級の航空会社です。
通常のフルサービス航空「Air Astana」と、LCCの「FlyArystan」を運営するAir Astana Groupとして、国内線の約70%をカバーしています。
日本ではこのように航空会社1社が国内線の約70%もカバーすることはほとんどないので、少し驚きました。
Air Astanaは、ロンドンやフランクフルトなどのヨーロッパ主要都市に加えて、北京やソウル、東京といったアジアにも直行便を飛ばしています。
そのため、ヨーロッパと東アジアを中央アジア経由でつなぐ役割を果たしています。
② サムルク・カズィナのこれまでの歩み

1991年、ソ連が崩壊するとカザフスタンには石油やガス、鉄道、電力といった巨大な国営企業が残りましたが、経営はソ連型で汚職やオリガルヒ化が蔓延し、とても非効率でした。
そのため、カザフスタン政府はこれらを1つの組織としてまとめて効率的に経営するために、2008年に 「サムルク・カズィナ」 を設立しました。
サムルク・カズィナは、ただの国営企業の持ち株会社ではなく、カザフスタン経済全体を動かす司令塔のような存在を担っているといえます。
なぜなら、カザフスタンの資産をまとめて管理し、景気が悪くなれば企業を支え、将来の成長が見込める産業には投資をしていく役割まで持っているからです。
そして、2010年代からはカザフスタン政府が国営のままだと非効率と判断したことにより、Air AstanaやKazatomprom、KazTransOilなどを次々と上場させました。
これにより、政府の内側の組織から、世界中の投資家にチェックされる普通の企業へと大きく変わり、経営の透明性や効率が改善していきました。
また2022年1月には、LPガス(自動車燃料)の価格がほぼ2倍に上がったことにより、大規模暴動が発生しますが、サムルク・カズィナの透明化や経営総入れ替えなどを進めていき対応しました。
③ サムルク・カズィナのこれからの展望

サムルク・カズィナのこれからのテーマの1つはもっと市場に開かれた組織に変えることです。
カザフスタン政府は今後もAir Astanaやエネルギー関連企業のIPO (新規公開株式)を追加で進め、外国人投資家をさらに呼び込む方針です。
同時に、収益を石油やウランに頼りすぎないように、再生可能エネルギー、物流、デジタル分野への投資も強化していきます。
簡単にまとめると、国家が主導しながらも、民間の力を取り入れて経済を多角化していくのが、サムルク・カズィナの次の成長戦略といえます。
まとめ
サムルク・カズィナは、カザフスタン政府が持つ重要な国有企業の株式をまとめて管理して運用している政府系の投資会社です。
例えば、石油のKazMunayGas、ウランのKazatomprom、航空会社のAir Astana、鉄道会社のKazakhstan Temir Zholyなど、国の土台となるインフラを担う企業の大株主になっていて、それらをまとめて動かすことができます。
個人的には、これまでカザフスタンの産業構造をあまり意識したことがなかったので、サムルク・カズィナのような超巨大グループに経済が大きく集中していると知って、とても興味深く感じました。
