LIC(Life Insurance Corporation of India)は、1956年に設立されたインド最大の生命保険会社です。
インドでは「保険といえばLIC」と言われるほどとても有名な存在で、約3億人以上のインド人がLICの保険に加入しています。
LICは、インド全土に約2,000以上の支店、約110万〜130万人の営業員がいて、都市部だけでなく地方や農村部をカバーしています。
この記事では、LICの事業内容やこれまでの成長、今後の展望をできるだけ分かりやすく紹介します。
① LICの事業を分かりやすく解説
ここでは、LICが何をしている会社なのかを1つずつ見ていきます。
生命保険(Jeevan LabhやJeevan Anand など)

LICの中心は生命保険で、インドの生命保険市場の約60%以上のシェアをLICが握っています。
LICで特に有名なのが、Jeevan Anand (終身保険)、Jeevan Labh (貯蓄型保険)、New Endowment Plan (満期保険)のような貯金しながら保険もついてくる商品です。
ちなみに、Jeevanはヒンディー語で 「人生」 という意味を持っています。
例えば、Jeevan Labhは、数十年くらい毎月コツコツお金を入れていくと、最後にまとまったお金がドンともらえて、しかも途中で何かあったら家族にお金が出るという、ほぼノーリスクの人生用積立のような商品です。
LICはインド政府が約96%を持っている国営企業なので、国が続く限り支払いが守られるという安心感があります。
民間銀行が破綻するのが珍しくないインドでは、その分、銀行に預けるよりLICのほうが安全だと感じる人が多いのです。
また、インフレが約5~7%で続くインドでは、銀行の定期預金は約4~6%なので、徐々にお金が減っていくことになりがちです。
しかし、LICだとボーナスや満期加算、死亡保障などがつくため、ただの預金より明らかにお金が増えると感じられる人が多いです。
このように日本人の感覚だと銀行で預けた方がいいと思ってしまいがちですが、民間銀行が弱くインフレ率が高いインドではLICのような国営の保険会社の方が信用されるのです。
年金・老後向け商品(Jeevan Akshay など)

LICは年金ビジネスでも圧倒的な存在感を持っています。
Jeevan Akshay(即時年金)などの商品では、一括でお金を預けると、毎月・毎年の年金が一生支払われます。
インドは日本と比べて公的年金が弱いため、中間層以上の人たちはLICの年金商品で老後資金を準備している場合が多いのです。
団体保険・企業向け保険LICは、今まで述べてきたような普通の個人向け保険だけでなく、会社や政府の職員向けの巨大な団体保険もまとめて引き受けています。
例えば、インド鉄道(Indian Railways)で働く100万人以上の職員や、NTPCなどの国営電力会社の社員たちの生命保険や退職金の仕組みをLICがまとめて管理しています。
このようにインドでは、個人の保険も、会社の福利厚生も、公務員の保障も、だいたいLICが面倒を見ている状態です。
つまり、LICは国民と企業と政府のお金を同時に預かっている巨大の銀行のような存在なのです。
インド最大級の機関投資家

実はLICは、インド最大の株式投資家のひとつでもあります。
LICは集めた保険料を、Reliance、Tata、Infosys、HDFC Bankなどの株に投資しています。
インド株式市場全体の7〜8%をLICが保有していると言われており、LICが株を買うと「その会社は安心できる」と見られるほどの影響力を持っています。
日本には、ここまで影響力を持っている保険会社はないので、とても興味深いと思いました。
② LICのこれまでの歩み

LICは1956年、インド政府が245社の民間保険会社を統合してムンバイで設立されました。
その目的は、保険会社を民間に任せず、インド国民の貯金と保険を国が守るためでした。
これには、独立直後のインドで民間保険会社の破綻や不正が相次ぎ、国民の貯金を守れなくなっていたことが背景にあります。
その後、1993年にインドが経済自由化を進めたことで、保険業界にもICICI PrudentialやHDFC Lifeなどのインドの銀行と欧米の保険会社が組んで作った民間企業が参入するようになり、LICの独占体制は終わりました。
それでもLICは、契約数や運用資産の規模で今もインド最大の生命保険会社としての地位を保ち続けています。
そして、LICは2022年のIPOで、インドの主な株式市場である「ボンベイ証券取引所(BSE)」と「ナショナル証券取引所(NSE)」に上場しました。
③ LICのこれからの展望

LICは今後、デジタル化を軸にオンライン保険を強化していくと考えられています。
既に1,000万以上インストールされているモバイルアプリ「LIC Digital」で契約や支払い、請求管理がスマホで完結するようにするようにして、それと同時にオンライン申込比率の拡大も狙っています。
現在インド保険市場は約 3,380億ドル規模で、2034年には約 8,680億ドルへと年11%超で成長すると予想されており、中間層の保険ニーズが急増しています。
LICはこの成長を取り込みつつ、若者などにも使われるように従来の対面販売からデジタル販売へシフトしていきます。
まとめ
LICは、3億人以上が利用するインド最大の生命保険会社で、生命保険や年金、企業の福利厚生、株式投資など幅広い分野を手がける、インド経済の中心を支える存在です。
国民の貯金と老後資金がLICに集まり、それが企業や市場に投資されることで、インド全体のお金が回っています。
個人的には、これからのインドの人口増加と中間層の拡大をそのまま取り込める、とてつもなく強い国営企業だと思います。
