ベトナム語というと、ローマ字のようなアルファベットで書かれた言語を思い浮かべる人が多いと思います。
しかし実は、ベトナムが現在のように「クオックグー」とよばれるアルファベットを使うようになったのは、ここ100年ほどの出来事にすぎません。
それ以前のベトナムでは、長い間、漢字(チュハン)と、漢字をベースに作られたベトナム独自文字のチュノムが使われていました。
この記事では、「なぜベトナムが漢字を使っていたのか」「いつからアルファベットになったのか」を、できるだけわかりやすく紹介していきたいと思います。
① ベトナムは約1,000年間、中国の支配を受けていた

ベトナムが漢字を使っていた最大の理由は、紀元前2世紀〜10世紀までの約1,000年間、中国王朝の支配を受けていたからです。
この期間、ベトナムは政治、文化、教育などすべてが中国に強く影響されていました。
例えば、漢字が使われていたり、科挙試験が行われていたり、儒教が広まっていたりといった点です。
このように、実はベトナムは日本や韓国以上に、中国の文化が深く根付いた地域だったのです。
② 漢字をベトナム語に合わせて発展させた「チュノム」

10世紀以降、ベトナムが「大越」と呼ばれる独立王朝を築いたことにより、「もっとベトナム語に合った表記を使いたい」という動きが起きました。
そこで誕生したのがチュノムです。
チュノムは、簡単に言えばベトナム人が生み出した漢字であり、中国語や日本語には見られないような漢字がたくさんあるのが特徴です。
③ じゃあアルファベット(クオックグー)はいつから?

現在使われているベトナム語表記「クオックグー(Quốc Ngữ)」が一般化したのは、20世紀前半のこととされています。
それには、19世紀後半からベトナムがフランスに植民地支配を受けていたことが関係しています。
フランスは言語においても影響力を拡大したかったことから、ベトナムの学校教育を漢字からアルファベットに完全に移行し、漢字やチュノムは禁止に近い形で急速に衰退しました。
そして、1920〜1930年代には、漢字文化はほぼ姿を消しました。
独立後も、識字率を高めたかったなどの理由で、漢字やチュノムではなく、クオックグー(アルファベット)が引き続き使われています。
つまり、ベトナムがアルファベットを使い出したのは、ここ100年ほどであり、それまでは漢字を使っていたのです。
これは日本では意外と知られていないことだと思います。
④ ベトナム語に漢字語が多く、覚えやすい

ベトナム語は、漢字語で考えると覚えやすいことが多いと言われています。
学生 → học sinh
活動 → hoạt động
生活 → sinh hoạt
例えば、学生の「生」は sinh、活動の「活」は hoạt になるため、生活を「生」と「活」で sinh hoạt と考えることができます。
このように考えると、かなり覚えやすいと思います。
よくベトナム語はタイ語よりも難しいと言われることがありますが、それは発音の話であり、スペルを覚えるだけであれば簡単な方だと私は思っています。
⑤ 漢字が完全に消えたわけではない

現在のベトナムでは漢字は日常的に使われていませんが、お寺や伝統的な行事では、今でも漢字文化を見ることができます。
特にハノイのホアンキエム湖の周辺にある寺院や祠(ほこら)では、今でも漢字で書かれた看板や石碑が多く残っています。
そういう点では、私は戦後にハングルを全面的に使うようになった韓国の状況とも似ていると感じています。
まとめ

まとめると、ベトナムが100年前まで漢字を使っていた理由は、約1,000年間、中国の政治や文化の影響を受けていたことがきっかけでした。
私は、ベトナムは日本人が思っているよりも日本に身近な国だと思っています。
実際に日本に住んでいるベトナム人は約65万人以上いて、日本語を学ぶ人もとても多いです。
多くの日本人は東南アジアというと、タイやフィリピンに目を向けがちですが、フィリピンは英語圏であり、タイは芸能界は欧米の影響を強く受けていて、文化的な面では日本よりも欧米に向いていると感じます。
しかし、ベトナムは漢字を使っていた歴史もあり、日本など東アジアに向いている人が多く、これから日本にとって重要な協力相手になっていくことが期待できると思います。
