ボスニア語は、主にバルカン半島のボスニア・ヘルツェゴビナを中心に約300万人に話されている言語です。
ちなみに、ボスニア・ヘルツェゴビナには公用語がボスニア語、セルビア語、クロアチア語の3つがあります。
そう聞くと、スイスやベルギーのように異なる言語が共存しているところを想像するかもしれません。
しかし実際には、ボスニア語・セルビア語・クロアチア語は、宗教や政治的背景によって区別されているだけで、言語としての特徴はほとんど同じなのです。
ボスニア語を話す人々は主にイスラム教、クロアチア語を話す人々はカトリック、セルビア語を話す人々は正教会を信仰しており、こうした宗教の違いが言語名の呼び分けにつながっています。
つまり、ボスニア・ヘルツェゴビナはトルコ (イスラム教)、ロシア (正教会)、ヨーロッパ (カトリック)という3つの文化圏が重なりあっている国といえるでしょう。
この記事では、ボスニア・ヘルツェゴビナの主要言語の1つであるボスニア語の文字・単語・文法・発音の特徴と学ぶメリットについて、初心者向けに分かりやすく解説していきます。
① ボスニア語の文字 ― ラテン文字が中心 ―

ボスニア語の大きな特徴のひとつが、主に英語と同じラテン文字を使って表記されるということです。
日常生活やメディア、教育の場では、ほぼラテン文字のみが使われています。
ちなみに、セルビアではキリル文字 (ロシア語と同じ文字)、クロアチアではラテン文字が使われています。
また、ボスニア語にも英語にはない特殊な文字があります。
具体的には、
č / ć / š / ž / đ
などです。
例えば、š は s にハーチェク(ˇ)を付けた文字で、英語の “sh” にあたる発音を表します。
これらの文字は最初は少し難しく感じるかもしれませんが、覚える数自体は少ないので、慣れてきたら自然に読めるようになると思います。
② ボスニア語の単語 ― セルビア語やクロアチア語とほぼ共通 ―

ボスニア語は、セルビア語やクロアチア語、モンテネグロ語と90%以上の語彙が共通しています。
そのため、ボスニア語を使えば、これらの言語話者とも問題なくコミュニケーションを取ることができます。
実際、例えば「言語」という単語は、
ボスニア語:jezik
セルビア語:jezik
クロアチア語:jezik
と、ボスニア語の単語がセルビア語、クロアチア語の単語と共通しています。
また、ボスニア語は他のバルカン半島のスロベニア語、ブルガリア語、マケドニア語といった言語とも共通点が多く、語彙の約半分が似ているとも言われています。
そのため、ボスニア語を身につけることで、ボスニア・ヘルツェゴビナに限らず、バルカン半島の広い地域でコミュニケーションが取れるようになります。
③ ボスニア語の文法 ― 語尾が変化し、語順は自由 ―

ボスニア語の文法の大きな特徴は、名詞の語尾が変化するということです。
日本語でいう「〜が」「〜を」「〜に」「〜と」といった意味を、ボスニア語では語尾の変化で表します。
例えば「先生」という単語 učitelj は、
učitelj
učitelja
učiteljem
というように形が変わります。
一方で、ボスニア語の語順は比較的自由です。
基本は英語と同じSVO(主語→動詞→目的語)なのですが、文脈によっては語順が入れ替わることもあります。
また、ボスニア語では動詞が主語に応じて活用します。
例えば「話す」という動詞 govoriti は、
govorim(私は話す)
govoriš(あなたは話す)
govori(彼・彼女は話す)
というように変化します。
そのため、動詞の形だけで主語が分かることが多く、日本語のように会話では主語が省略されることもとても一般的です。
④ ボスニア語の発音 ― スペルから発音が分かる ―

ボスニア語の母音は、
a / e / i / o / u
の5つのみで、日本語と同じく非常にシンプルです。
一方で、子音は約25個あり、日本語には存在しない音も含まれています。
例えば、
š [ʃ]:英語の sh
č [tʃ]:英語の ch
ć:č より柔らかい ch の音
などがあります。
ただし、ボスニア語はつづりと発音がほぼ一致する言語なので、基本的には書いてある通りに読めば発音できます。
そのため、いくつかの特殊文字を覚えてしまえば、発音は比較的スムーズに身につきます。
⑤ ボスニア語を学ぶメリット ― 旧ユーゴスラビア全域で通じる ―

ボスニア語を学ぶ最大のメリットは、ボスニア国内だけでなく、その周辺国でも広く通じる点です。
ボスニア語が分かれば、セルビア、クロアチア、モンテネグロなどの地域でも会話が可能になります。
これらの人口を合計すると約2,000万人となり、ヨーロッパでは中くらいの規模になります。
さらには、ボスニア語を身につけることは、同じスラヴ系の言語であるロシア語やポーランド語、ブルガリア語などの学習にもつながります。
そのため、バルカン半島やスラヴ世界に興味がある方にとって、ボスニア語はとても魅力的な選択肢と言えるでしょう。
まとめ
ボスニア語は、バルカン半島で話されているスラヴ系の言語です。
主にラテン文字を使用し、セルビア語やクロアチア語と非常によく似ています。
また、名詞の語尾が変化する文法を持ち、発音もスペルと対応していて学びやすいです。
一見するとマイナーに見える言語ですが、実は旧ユーゴスラビア全体で通じる高い実用性を持っています。
