アラビア語というと、「アラビア語圏ならどこでも通じる」と思っている人も多いと思います。
しかし実際には、アラビア語は国ごとに方言が大きく異なり、話者同士でも方言が違うと会話がほとんど通じないとされています。
特に、サウジアラビア・UAEの「湾岸方言」と、モロッコなどの北アフリカの「マグリブ方言」は、北京語と広東語くらいの差があると言われています。
今回は、そんなアラビア語の方言の世界について、できるだけ分かりやすく紹介していこうと思います。
➀ アラビア語は「一つの言語」ではない

アラビア語は、表記としては同じアラビア文字を使っていますが、実際の話し言葉は国ごとにまったく違います。
そのため、アラブ人同士が会話をするとき、「え?これはどういう意味?」となることも珍しくありません。
アラビア語の方言は以下の4つに分けられます。
1 エジプト方言
2 レバノン・シリア方言
3 湾岸方言(サウジ・UAEなど)
4 北アフリカ方言(モロッコ・アルジェリアなど)
この中で、エジプト方言は映画やドラマ産業が強く、アラブ世界全体で広まっているため、アラブ世界で最も通じやすいとされています。
② 同じアラビア語の文章でも、方言でこんなに違う

実際にアラビア語の方言がそれぞれどのくらい差があるのか比べてみようと思います。
例えば「私はアラビア語を勉強したい」という文を作ってみました。
エジプト方言ʿayez atʿallim ʿarabi.
レバノン方言baddi etʿallam ʿarabi.
湾岸方言(UAEなど)abi atʿallam ʿarabi.
モロッコ方言(北アフリカ)bghit ntʿallem l-ʿarabiyya.
すべて“アラビア語”ですが、それぞれ大きく異なっていることがわかるでしょう。
そのため、エジプト人とモロッコ人が、この方言だけで会話した場合、ほぼ成り立たないと言われています。
③ 「ニュースで聞くアラビア語」と「日常会話のアラビア語」は違う

アラブ世界では、方言だけでなく、共通語として「フスハー」という標準アラビア語が存在します。
ニュースや新聞、学校の教科書、政治・宗教の場などでは基本的にフスハーが使われます。
しかし、フスハーは日常生活ではほとんど使われません。
例えばフスハーを使うというのは、日本語でいうと、「私は本日、貴殿に感謝の意を表明する所存であります」のような堅い敬語だけで生活する感覚に近いです。
そのため、アラビア語学習者がフスハーを学んでも、日常会話ではあまり役に立たないこともあります。
④ なぜアラビア語は方言がここまで違うのか?

アラビア語が国ごとに大きく分かれた理由は2つあり、歴史的に見るととても自然なことだと言えます。
まずは、アラブ帝国の領土があまりにも広かったからです。
7世紀に生まれたイスラム帝国は、スペインからイラクまで広がり、約7,000kmの広さに及びました。
そのため、広い地域で話されることで、言語変化が一気に進んでいきました。
次に、現地語が混ざったからです。
北アフリカではベルベル語、イラクではアッシリア語など、地域ごとの言語がアラビア語に混ざっていき、全く違う方言になっていったことなどが挙げられます。
そもそも国が異なっていて、それぞれの国が話し合い、共通のアラビア語を作ろうとしたことがないため、国ごとにアラビア語が大きく異なっているのは、ある意味自然なことなのかもしれません。
⑤ 学習者はどのアラビア語を学ぶべき?

これは目的によりますが、基本的にはエジプト方言をおすすめします。
理由は、映画やドラマ、YouTubeなどのコンテンツが豊富で、他のアラブ人もエジプト方言を理解できる場合が多いからです。
また、ニュースなど中東の情勢を理解したい場合は、フスハー(標準アラビア語)を学ぶのも良いかもしれません。
まとめ

アラビア語は世界で3億人以上が話す大きな言語ですが、実際には「共通語+国ごとの方言」という複雑な構造になっています。
そのため、アラビア語話者同士でも会話ができないことがあり、特にUAEの人々とモロッコの人々では、かなり大きな違いがあるのです。
