アラブ人は、中東から北アフリカにかけて暮らしている人々で、アラブ諸国と呼ばれる地域には合計約4億人以上が住んでいます。
「アラブ人」と聞くと、砂漠のイメージやイスラム教の国というイメージを持つ人も多いと思います。
しかし実際には、アラブ世界は日本の何十倍も広く、人々の文化も多様で、アフリカ的な雰囲気の国もあれば、ヨーロッパに近い雰囲気を持つ国もあります。
そして、アラブ人は言語的にも強い結びつきを持っていて、アラビア語という共通語を中心に、大きな文化圏を構成しています。
そのため、アラブ人を理解することは、中東・北アフリカ全体を理解するための重要な視点となるでしょう。
今回はそんなアラブ人について、文化・言語・歴史などの面からわかりやすく紹介していきます。
① アラブ人の外見と雰囲気

アラブ人の見た目は、国によってかなり幅があるとされています。
例えばUAEやサウジアラビアなどの湾岸地域は、日差しの強さもあり、肌がやや濃い茶色の人が多いです。
一方でレバノンやシリアなどは地中海沿岸に位置しているため、ギリシャ人のようなヨーロッパ系に近い顔立ちの人も多いです。
また、イスラム教の衣装として有名な男性の「カフィーヤ」や女性の「ヒジャブ」などの頭に巻く衣装は、もともとは強い日差しや砂嵐から身を守るために生まれたものだとされています。
② アラブ人の文化と暮らし

アラブ人が暮らしている都市といえば、エジプトのカイロ、ドバイ、サウジアラビアのメッカなどが有名でしょう。
特にエジプトのカイロは人口1,000万人を超える巨大都市であり、アラブ世界の文化の中心ともいえる場所です。
エジプトの映画や音楽はアラビア語圏全体で流行しているといわれています。
一方でドバイは、近代的な高層ビルが立ち並び、アジアでいうとシンガポールのような現代都市の雰囲気があります。
ただ実はドバイは現地人は約1割ほどで、人口の約7割はインドやパキスタンなど南アジア系です。そのため、完全に中東の都市というよりも、多国籍なグローバル都市というイメージの方が近いです。
そして、サウジアラビアのメッカはイスラム教の聖地として知られており、イスラム教徒たちはメッカの方向を向いてお祈りをします。
アラブ世界の食事で最も有名なのは、「フムス」でしょう。

フムスはひよこの豆を原料として、オリーブオイルやレモン汁などをかけて食べる料理です。
日本ではなかなか売られていませんが、カルディと呼ばれる輸入品ストアや中東料理屋に行けば食べられるそうです。
そして、私が興味深いと思ったのは、アラブ世界では「手で食べる文化」がまだ残っているということです。

手で食べるのはインド人だけというイメージを持っていましたが、アラブ人もそうだったことに少し驚きました。
ちなみに、マレーシアのマレー人も手で食べる文化があるそうです。
ヒンドゥー教やイスラム教の文化圏では共通なのかもしれません。
③ アラブ人の言語

アラブ人が話すのは「アラビア語」ですが、実は国ごとに方言が大きく異なっており、サウジアラビア人とモロッコ人が必ずしもスムーズにコミュニケーションを取れるわけではありません。
例えば、「私はアラビア語を勉強したいです。」という文をそれぞれの方言で作ってみます。
エジプト方言 ʿayez atʿallim ʿarabi.
湾岸方言(UAEなど)abi atʿallam ʿarabi.
北アフリカ方言(モロッコなど)bghit ntʿallem l-ʿarabiyya.
わかりやすくアルファベットで表記しましたが、それぞれ異なっていることが分かると思います。
特にUAEなどの湾岸方言とモロッコなどの北アフリカ方言は、北京語と広東語くらいの違いがあるといえるでしょう。
しかし、テレビニュースや学校では「フスハー」と呼ばれる標準アラビア語が使われるため、アラブ人同士はその共通語を通じてコミュニケーションを取ることができます。
このアラブ世界における「共通語+方言」の構造は、インドネシアにおけるインドネシア語とジャワ語、中国における普通話と上海語のような構造と似ていると思います。
④ アラブ人のルーツと歴史

アラブ人のルーツは、アラビア半島に住んでいた砂漠の部族が中心にあったとされています。
その後、7世紀にイスラム教が誕生し、イスラム帝国の広がりとともに、アラビア語とアラブ文化も同時に中東・北アフリカ全体に広まっていきました。
例えば、現在のエジプトの人々は古代エジプト人の子孫であり、もともとはエジプト独自の言語や文字を使っていました。
しかし現在は言語と文化がアラブ化しており、これは文化におけるアラブ化がいかに強力だったかを示している例だといえるでしょう。
そして、近世や近代では、オスマン帝国やヨーロッパによってアラブ世界は植民地化されていきましたが、20世紀にはアラブ諸国が次々と独立し、今の国の形になっていきました。
⑤ アラブ人の社会

アラブの地域は、国によって豊かさがかなり異なっています。
サウジアラビアやUAEなどの湾岸諸国は石油や天然ガスがとても豊かで、所得水準は先進国並みです。
そして、ドバイやカタールなどは、南アジアやフィリピン出身の外国人労働者が人口の大半を占めていて、彼らが高層ビルの建設や肉体労働を主に行っています。
一方で、エジプトなどの北アフリカやイエメンなどは人口も多く、経済は発展途上で、所得水準は東南アジアと同じくらいです。
しかし、特にエジプトは人口がこれからも増えると予想されており、2050年には1億6,000万人ほどになると言われています(2025年時点では約1億2,000万人)。
まとめ

アラブ人は中東から北アフリカに広がっていて、アラビア語やイスラム教を共有しながら、独自の文化を発展させてきた人々です。
砂漠の部族文化から未来都市まで、とても多様な面を持つアラブ人について理解することは、中東の情勢やビジネスを理解する上でも欠かせないと思います。
