PTTグループとは? タイのエネルギーと産業を支える巨大な国営グループ

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PTTグループ(旧・タイ石油公社)は、1978年に設立されたタイ最大の国営エネルギー企業グループです。

正式名称は PTT Public Company Limitedで、本社はバンコクのチャトゥチャック区にあります。

もともとはタイ政府の石油・ガス部門として生まれ、現在では石油や天然ガス、電力、石油化学、ガソリンスタンド、EV、病院、ITまで幅広く手がける巨大コングロマリットに成長しました。

タイのガソリン、電気、プラスチック、化学製品の多くがPTTグループによって供給されており、タイの人々の日常生活を支えています。

この記事では、PTT Groupの事業内容やこれまでの成長、そして今後の展望をできるだけ分かりやすく紹介していきます。

① PTT Groupの事業を分かりやすく解説

ここでは、PTTグループの主な事業を1つずつ見ていきます。

石油・天然ガスの開発と生産(PTTEP)

PTTグループの中で、石油や天然ガスの開発と生産を担っているのが、子会社のPTTEP(PTT Exploration and Production)です。

PTTEPは、タイ湾や中東、アフリカ、マレーシアなどで石油と天然ガスを掘る会社で、原油と天然ガスを合わせて約49万バレル/日を生産しています。

(出典:PTTEP公式資料、Wikipedia)

実際、ガソリンスタンドでは、PTT系のORがタイの燃料販売の約39%を占めていて、バンコクやチェンマイなどどこでもPTTのスタンドを見かけます。

(出典:PTTEP 2025年業績発表)

さらに天然ガスでは、全国に張り巡らされたガスパイプラインをPTTが管理していて、発電所や工場、家庭用ガスまで、ほとんどがPTT経由で供給されています。

つまり、タイで電気を使う人も、車にガソリンを入れる人も、PTTのお世話になっており、日常生活に欠かせない存在となっているのです。

ガスパイプラインとLNG(PTT Public Company Limited)

PTT Public Company Limitedは、掘り出した天然ガスを国内に運ぶ役割を担っています。

PTTはタイ国内に約4,255kmの天然ガスのパイプラインネットワークを持っていて、発電所や工業団地、都市部へガスなどを送り続けています。

特にヤダナ・パイプライン(Yadana Pipeline)と呼ばれるタイとミャンマーのヤダナガス田の間を結ぶ巨大パイプラインは有名で、タイの天然ガスのおよそ約25%を占めています。

(出典:PTT公式資料、Wikipedia)

さらに、LNG(液化天然ガス)もカタールやオーストラリアなどの国々から年間約1,141万トン以上を調達しており、タイの電力会社や工場に供給しています。

(出典:世界銀行貿易統計、タイのLNG輸入データ)

ガソリンスタンド(PTT Station & OR)

PTTは、タイ最大のガソリンスタンドのネットワークも持っています。

子会社のOR(PTT Oil and Retail) が運営するPTT Stationはタイ全体に約2,300店舗あります。

(出典:ORおよびエネルギー業界レポート)

しかも、単なるガソリンスタンドではなく、Café Amazon(東南アジア最大級のコーヒーチェーン)やコンビニ、EV充電所、レストランなどがセットになっているのです。

こういったカフェやレストランが付いているガソリンは日本では珍しいので、とても面白いと思いました。

石油化学・プラスチック(PTTGC, TOP, IRPC)

PTTグループは、タイ最大の化学メーカーでもあります。

具体的には以下のメーカーがあります。

PTTGC(プラスチック・化学製品を作る)

TOP(ガソリン・燃料を作る)

IRPC(燃料と化学製品を両方作る)

これらの会社で、年間1,430万トン以上の化学製品やプラスチック、燃料などを生産しています。

(出典:PTTGC公式資料)

これはかなりの規模で、スマホのケースや車の部品、食品の包装、服の素材、建材まで、タイで使われているプラスチック製品の多くが、PTTによって作られています。

② PTT Groupのこれまでの歩み

PTTは1978年に、タイ政府の石油・ガス部門としてバンコクで設立されました。

当時のタイはエネルギーの多くを中東やミャンマーからの輸入に頼っていて、エネルギーが不安定で、経済成長の足を引っ張っていました。

そのため、タイ国内で石油とガスで作れるようにするために、PTTが設立されました。

そして1980年ごろには、タイ湾で大規模な天然ガス田が発見されます。

ここでPTTは、ガス田の開発やパイプラインの建設、発電所・工場への供給を一気に行い、タイは「輸入国」から「自前エネルギー国家」へと変貌しました。

1990年頃には、PTTは以下のような子会社を次々と作りました。

PTTEP(石油・ガスを掘る)

PTTGC(石油化学・プラスチック)

TOP(製油)

IRPC(化学)

PTT Oil and Retail(ガソリンスタンド・小売)

ただガスを売るだけではなく、石油を地下で掘ったり、工場でガソリンやプラスチックにしたりするところまで行うようになりました。

そして2001年には、PTTはタイ証券取引所に上場しました。

ただ株式の過半数は今もタイ政府が持っており、まだ国営企業の色が強いのが特徴です。

国内ガス田の開発を進めたことでエネルギー自給率が大きく向上しました。

現在では、タイで使われるガスの約61%がタイ湾の国内ガス田から供給されており、PTTの取り組みによって、タイはエネルギーを自前でかなりまかなえる国になりました。

(出典:Thailand Development Research Institute)

③ PTT Groupのこれからの展望

PTTグループは今、「石油会社」から「次世代エネルギー企業」へ本気で変わろうとしています。

特に力を入れているのがEV(電気自動車)と水素、そしてグリーンエネルギーです。

EVではArun Plusという子会社を中心に、車やバッテリー、充電インフラまでまとめて作る体制を構築中で、ASEAN版テスラを目指しています。

水素や太陽光発電、風力発電、CO₂回収、SAF(環境にやさしい航空燃料)にも投資しており、将来のクリーンエネルギー市場も取りにいく戦略です。

石油で稼いだお金を使って、次の時代のエネルギーにどんどんシフトしているのが今のPTTといえるでしょう。

まとめ

PTTグループは、ガソリンや電気、ガス、プラスチックまでをまとめて支えている、タイの超巨大エネルギー企業です。

国営ならではのインフラ力と、「掘る」 「作る」 「売る」を全部そろえたビジネスモデルで、タイの暮らしと産業を根っこから支えています。

個人的には、その石油マネーを使って、次の時代を見据えて、EVやクリーンエネルギーに本気でシフトしているのが、PTTの興味深いところだと思います。

参考・出典

PTT Public Company Limited – One Report (年次報告書)

PTTEP(PTT Exploration and Production)公式

PTTEP 2025年9か月決算(生産量データ)

Wikipedia: PTTEP

Yadana Pipeline(タイ–ミャンマー)

世界銀行(タイのLNG輸入:HS271111)

PTT Oil and Retail(OR)・EV充電ニュース

PTTGC(事業構造・生産能力)

Thailand Development Research Institute(TDRI)

Wikipedia: PTT